2006 年 130 巻 p. 60-69
『女性のことば・職場編』(1997) の自然談話データの特性を生かし,終助詞「わ」の使用の実態をみた。先行研究による量的な調査結果を踏まえ,主に質的な観点から考察した結果,傾向として以下の3点が見出せた。⑴ デス・マス体に接続する「わ」は皆無であり,「くつろいだ場面」で,同年齢層あるいは下の年齢層の日頃接触量の多い親しい関係にある相手に対する発話に多くあらわれる。⑵ 若年層の女性による「わ」の使用は中年層女性に比べ,「ね」や「よ」を伴わない単独の形,引き延ばし音調を伴った形で現れることが多い ⑶ 若年層女性において,ある特定の場面,話題に「わ」が現れやすい。「わ」の使用率は全体として高くはないが,若年層女性は情意的な側面の伝達手段の一つとして選択使用している実態が窺え,今後単純に消滅に向かうとはいえない。