言語表現形式にバリエーションがあるのと同様に,言語行動にもバリエーションがある。それは,だれが,だれに対して,いつ,どこで,どんな内容で,どんな目的で,どんな媒体を用いて,どのような言語形式を用いて行うかという,言語行動の構成要素にまつわる多様性として,現実の言語行動を成り立たせている。また,そのバリエーションには,「価値・目標」が備わっており,その選択には人的な属性や場面・状況などが「条件」として働き,その選択の「判断基準」には言語行動意識が関与していると考えられる。今後の日本語教育では,こうした言語行動のバリエーションを,学習者の母語の言語行動との対照研究などを踏まえ,学習段階や学習目的に応じて,積極的,的確に扱うことが必要である。