方言とは,何らかの基準によって分かれたそれぞれの変種に対する名づけであり,地域方言のみならず,社会方言や機能方言を含んだ概念である。
現代日本において個人は複数の社会に同時に所属し,それぞれの地域や社会のしくみに従って言語選択を行いながら,切り替えつつ言語生活を行っている。そのため,共通語を身につけた上で,地域方言を付加的に習得するという従来の方言観では不足が生ずる。
第2言語を適切に話すためには,言語形式の意味指導とともに,意味内容をいかに記号化するかという談話論的指導が重要である。その際,地域や社会ごとに異なる行為の意味に留意させ,その方言ではどのように「行為の見立て」あるいは「事態認識」を行っているか意識させながら,談話行動につなげることが必要となる。ことばは自律的な体系であるとともに,現実の社会や地域のあり方と一体的に使用されているからである。