2010 年 144 巻 p. 4-14
本論では,日本語教育の多様化に対応して日本語教師の多様化が求められていることを踏まえて,そもそも日本語教師は基本的に,あるいは共通して,どのような力量や専門性(リーダーシップ)を備えているべきかを考えるために,学習者と教師を対象とした日本語教師の行動特性に関する一連の国際調査を紹介した。その分析結果,目標達成機能(言語知識・言語技能・運用能力,文化・世界に関する知識,授業の実践能力)と集団維持機能(教室経営,人間関係,フィードバック行動,カウンセリング・マインド)を総合的に身につけることが必要だと分かった。
これを受けて,カウンセリング・マインドを備えた日本語教師の育成が今後の課題であることを指摘し,その新しい傾向を教師の成長という概念で表現した。どのような日本語教育を行うために,どのような教師が必要なのか,を常に自問することも大切である。