日本語教育
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寄稿論文
日本留学のあり方と大規模テストの可能性
西原 鈴子
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2011 年 148 巻 p. 4-12

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抄録

 日本国内に留学生を受け入れることには,個々の留学生の知的達成目標と将来計画の充足を支援するという直接的目的のほかに,受け入れる日本社会の側からの期待が込められている。(1)日本の知的資源の国際的共有,(2)高等教育の活性化,(3)知日・親日人材の育成,(4)将来における生産年齢人口の質・量確保,などである。現行の計画の中で(1)の要因を満足させるには,英語力のある学生を優先的に獲得することが重要となるが,(4)のためには卒業までに日本社会で活躍できるだけの日本語能力を養成する責任を負うことを念頭に入れた,入学時の学生受け入れが肝要である。

 日本留学の出発点においては,留学生としての資格を得るために「日本留学試験」などの関門が設けられており,各高等教育機関は,それらの大規模テストを主体的に活用することが求められている。しかし,大規模テスト自体にも制約が多く,留学生受け入れに果たす役割と持つべき性格に関して,現時点では関係各方面に認識が共有されているとはいえない。むしろ留学生に対する期待の違いに起因して錯綜する要因の存在が浮き彫りになる。留学生受け入れのためには,テスト制度の改善と共に,留学生受け入れに関して,日本の高等教育および日本社会の将来を視野に入れた議論が必須である。

 さらに,受け入れた留学生が卒業・修了後に日本社会に定着し,中核的な人材として活躍することも見据えた,長期的展望に立った総合的留学生政策の策定が必須である。そのための産学官の連携,地域社会の行動計画を含めたさらなる議論を展開することが必要である。

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© 2011 公益社団法人 日本語教育学会
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