2012 年 152 巻 p. 14-29
日本企業でのインド人ITエンジニア(IE)の増加に伴い,IEと日本人従業員(JCW)とのコミュニケーションを仲介するインド人ブリッジ人材(IBR)も増加している。IBRは,高度な日本語能力を有するものの就業中に問題を抱えている。本研究では,IBRが就業企業のプロジェクト遂行方法を理解し,適切に情報授受を行うための能力に関して示唆を得るため,IBR,JCW,IEに行ったインタビューの回答に基づいて製品開発中の情報授受全体の枠組みを示した。そこで発生する問題の分析の結果,「ビジョン共有」のためにJCWの必要とするIEの開発状況などの情報を,IBRがIEから受け取ることが困難であることが分かった。これはIEのビジョン共有の目的に関する理解不足が原因と考えられるため,IBRには,JCWとIE間のコミュニケーションを調整し,双方に他者の方法の長所に関する理解を促しつつ情報授受を行う能力が求められる。