学習者は「弟は10歳だけだ」など不自然な「だけだ」を多用する。先行研究ではこのような「だけだ」は質を規定する名詞述語に接続すると不自然になるとされている。
本稿では「だけだ」が質を規定する名詞述語に接続しても不自然にならない反例があることを指摘し,「だけだ」が不自然になる原因を解明する。「Xだけだ」というのはたとえば「朝食はバナナだけだ」のように「X+X以外」のセットを前提集合とし,その否定「X+X以外のセットではない。Xはあるが,X以外はない」を表していなければならない。しかし,問題となる「だけだ」では前提集合「X+X以外」があり得ない。質を規定する述語Xにつく「だけだ」では「X+X以外」が,「Xであり,かつ,X以外だ」になるからである。たとえば,学習者が用いる「弟は10歳だけだ。まだお酒は飲めない。」の場合,「弟が10歳であり,かつ,20歳だ」はあり得ないので,「だけだ」が不自然になる。