日本語教育
Online ISSN : 2424-2039
Print ISSN : 0389-4037
ISSN-L : 0389-4037
研究論文
「取り立て」再考
藪崎 淳子
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 166 巻 p. 15-30

詳細
抄録

 本稿は,「取り立て」とは何かを再考するものである。「係助詞」「副助詞」という伝統的カテゴリーの別を排し,両者に共通するところを括る「取り立て」は,日本語学だけでなく,日本語教育の分野においても用いられる術語である。しかし,「取り立て」とは何かについて一定の見解はなく,範列関係を表すものを「取り立て」とする立場と,範列関係を表すことに加えて「要素をきわだたせる」ものを「取り立て」とする立場がある。この定義の差によって扱いの異なる,概数を表すグライ・バカリ,順序を表すカラ・マデの検証を通じ,「取り立て」の意味を考える。そして,「取り立て」とは範列関係を表すものであると捉えると,形式間に見られる分類基準の差を解消でき,さらには助詞だけでなく,類義の副詞も含めた「取り立て」形式の体系を成す上でも有意であると主張する。また,本稿の議論が日本語教育にどう関わるのかにも言及する。

著者関連情報
© 2017 公益社団法人 日本語教育学会
前の記事 次の記事
feedback
Top