本研究では,日本語を第二言語とする(以下,JSL)生徒(n=8)を対象に,小・中学校教科書で使用される多義動詞の意味・用法の習得について産出・理解調査を行った。対象動詞は,日本語モノリンガル(以下,Mono)の子どもが初期の段階で習得すると考えられる基本的な多義動詞10語で,対象用法は教科書コーパスから選出された80用法である。調査の結果,産出・理解ともにJSLの派生的用法の習得は中心的用法に比べ難しいことが分かった。さらにMono・JSLの産出正答率をもとに,JSLのみ正答率が低い用法とMono・JSLともに正答率が低い用法に分けて分析し,JSLが苦手とする用法の特徴を詳細に調べた。教科書にはMono・JSLともに産出が難しい用法が存在し,JSLの語彙力はMonoと同様に発達過程にあると言えるが,一方で理解面における遅れは,JSLのみに見られることが明らかになった。