日本語教育
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実践報告
漢字圏日中バイリンガル児童のための漢字学習スキャフォールディング
―北京・台北での実践をもとに―
柳瀬 千惠美
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2021 年 180 巻 p. 64-79

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抄録

 本稿は第二言語習得の認知的アプローチと社会的アプローチを統合し,中国語知識を利用して日本語の漢字を理解する認知処理をもとに,中国語から日本語への言語間転移を促すスキャフォールディング実践の報告である。実践は簡体字を使う北京と繁体字を使う台北において,現地小学2年生課程修了,つまり中国語の漢字を先行学習した日中バイリンガルを対象に,日本語の漢字読みタスクを対話形式で行った。北京20名と台北14名の実践結果から,字体の相違が中国語知識の利用に大きな影響を与えること,また漢字の形態,意味,読みの順を基本に文脈で検証しながら漢字語彙処理を行っていることが示唆された。さらに日本の漢字に対するこのような認知処理を促すことがスキャフォールディングを成功に導く一方で,児童の発達や音声日本語語彙力による限界も示された。これに基づき,漢字圏日中バイリンガル児童のための漢字学習スキャフォールディングの提案を行う。

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