日本語教育
Online ISSN : 2424-2039
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180 巻
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一般論文
研究論文
  • ―習熟度・テンス・動詞タイプからの考察―
    西坂 祥平
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 180 巻 p. 1-16
    発行日: 2021/12/25
    公開日: 2023/12/26
    ジャーナル フリー

     中国語を母語とする日本語学習者による「ている」「ていた」の「動作の持続」「結果の状態」用法の習得状況を調査した。中国の大学で日本語を専攻する180名をSPOTで下位・中位・上位群に分け,多肢選択式課題を実施した結果,「動作の持続」については下位群から高い正答率が確認された。また,「ている」が「ていた」より有意に正答率が高かった。一方,「結果の状態」では,習熟度に関わらず正答率が低く,習得の困難さが確認された。「結果の状態」においては,学習者の母語で対応する動詞が,持続を表すアスペクトマーカーと共起できるか否かによって正答率に開きが見られた。本研究は,無テンス言語である中国語を母語とする日本語学習者による「ている」「ていた」の習得過程を明らかにし,アスペクトマーカーの共起可否という母語の特徴が,「ている」「ていた」の「結果の状態」の習得難易度を説明する際に有効であることを示した点で意義がある。

調査報告
  • ―チューターと書き手双方の視点から―
    保田 幸子, 張 梓楨
    原稿種別: 調査報告
    2021 年 180 巻 p. 17-32
    発行日: 2021/12/25
    公開日: 2023/12/26
    ジャーナル フリー

     近年,留学生に対する文章執筆支援の新しい形態として,授業外で書くことを支援するライティングセンターへの関心が高まっている。本研究の目的は,ライティングセンターのチューターがどのように留学生の文章執筆支援を行っているか,留学生はチューターの支援を通してどのような学びや気づきを得ているかを明らかにすることである。チューター3名と留学生(大学院生)3名に半構造化インタビューを実施し,逐語録を修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した。その結果,【信頼関係の構築】,【待つ姿勢】,【気づきを促す工夫】といった概念がチューターにとっての《支援の成功の鍵》につながることが示唆された。また,留学生は,チューターとの対話を通して,【自身の思考への気づき】や【考えているのに書いていないことの気づき】を得ており,ライティングセンターの継続的な利用に至るまでに《学び方の学びほぐし》が起きていることが示された。

  • ―農業現場の実態に沿う技能実習生日本語教育のために―
    飯田 朋子
    原稿種別: 調査報告
    2021 年 180 巻 p. 33-48
    発行日: 2021/12/25
    公開日: 2023/12/26
    ジャーナル フリー

     技能実習生に対する日本語教育を改善していくためには,技能実習現場で求められるコミュニケーションの実態に沿った教育を考えていく必要がある。従って,本研究では農業関係職種に焦点を当て,技能実習生と日本語母語話者の協働と,そこでの日本語コミュニケーションの実態を明らかにするため,技能実習生を受け入れている4企業に対して年単位の継続調査を行いデータ収集及び分析を行った。その結果,技能実習生にリーダーを定めることでコミュニケーションを円滑に進める事例や,技能実習生と日本語母語話者が一対一で共有するコミュニケーションプロセスによって協働が成り立つ事例等,各企業の協働現場に沿ったコミュニケーション方策が明らかになった。日本語コミュニケーションに長ける技能実習生はその企業で技能実習3号や特定技能に繋がる事例が見られ,現場で求められるコミュニケーションを教育に反映させる重要性が示唆された。

実践報告
  • ―留学生と日本人学生のアンケート結果からの考察―
    早野 香代
    原稿種別: 実践報告
    2021 年 180 巻 p. 49-63
    発行日: 2021/12/25
    公開日: 2023/12/26
    ジャーナル フリー

     日本語コミュニケーションのZoomとMoodleのオンラインによる反転授業で,Zoomのブレイクアウトルームを使い,ジグソー学習法でないものとジグソー学習法の2種類のグループ学習を行った。対面のジグソー学習法は,グループ間の移動やグループによるばらつき,教師の介入が課題であった。本実践では,グループ間の移動はZoomの新機能追加で円滑に行え,グループによるばらつきは学生の質問づくりやMoodleの小テストで改善に努め,教師の介入はブレイクアウトルームの巡回やMoodleの振り返りで個別に対応した。その結果,学生アンケートからは,発表の準備,発表,理解の全てにおいてジグソー学習法のほうがよくできたと評価され,ジグソー学習法は1人で発表する負担があるが,理解度は増すという特徴が掴めた。グループ学習時間の確保や教師の介入の仕方などの課題は残ったが,オンラインによるジグソー学習法の効果が見出せた。

  • ―北京・台北での実践をもとに―
    柳瀬 千惠美
    原稿種別: 実践報告
    2021 年 180 巻 p. 64-79
    発行日: 2021/12/25
    公開日: 2023/12/26
    ジャーナル フリー

     本稿は第二言語習得の認知的アプローチと社会的アプローチを統合し,中国語知識を利用して日本語の漢字を理解する認知処理をもとに,中国語から日本語への言語間転移を促すスキャフォールディング実践の報告である。実践は簡体字を使う北京と繁体字を使う台北において,現地小学2年生課程修了,つまり中国語の漢字を先行学習した日中バイリンガルを対象に,日本語の漢字読みタスクを対話形式で行った。北京20名と台北14名の実践結果から,字体の相違が中国語知識の利用に大きな影響を与えること,また漢字の形態,意味,読みの順を基本に文脈で検証しながら漢字語彙処理を行っていることが示唆された。さらに日本の漢字に対するこのような認知処理を促すことがスキャフォールディングを成功に導く一方で,児童の発達や音声日本語語彙力による限界も示された。これに基づき,漢字圏日中バイリンガル児童のための漢字学習スキャフォールディングの提案を行う。

研究ノート
  • 松下 達彦, 劉 瑞利, 得丸 智子, 中島 明則
    原稿種別: 研究ノート
    2021 年 180 巻 p. 80-88
    発行日: 2021/12/25
    公開日: 2023/12/26
    ジャーナル フリー

     穴埋めテストの一種であるクローズテスト(Taylor, 1953)はL2の読解力,聴解力や総合的L2能力の測定に適したテストとして発展してきた。本研究では,語彙データベースを活用し,特定の語彙特性を持つ語や文字などを指定して穴埋めテストを作成できるウェブツールを開発した。ウィンドーにテキストを貼り付け,条件指定して作成ボタンを押すだけで作成でき,ダウンロード,加工もできる。区切り単位として,語/文字/節/文を指定でき,語の選択では,頻度レベル,品詞,語種,語彙ジャンル,穴あけ間隔などを指定できる。文字の場合は,文字種,頻度レベル,穴あけ間隔などを指定できる。また,語/文字/節/文に共通の指定項目として,フリガナの有無,穴にした部分を選択肢として残すかどうかを指定できる。語彙力や文法力の評価,自律学習や授業への応用,語彙リスト作成,未知語の意味推測の研究など,多方面での応用が期待される。

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