日本語教育
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研究論文
動詞の類型化と中国語話者によるアスペクト習得
―事態の捉え方の違いとインプットに注目して―
西坂 祥平
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2022 年 182 巻 p. 16-32

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抄録

 「結果の状態」の「ている」は日本語学習者にとって習得が難しい文法項目の一つとされる。同時に,「ている」の難易度は,学習者の母語で対応する表現によって異なるとする研究もある。本研究では,中国語との対照の観点から,テイル形が「結果の状態」を表す動詞を【財布が落ちる型】【車が停まる型】【電気が付く型】【椅子が壊れる型】の4 類型に分けた。各類型の「結果の状態」の「ている」習得について,中国語を母語とする上級日本語学習者49 名を対象に空欄補充式の絵描写タスクを実施した結果,類型間に難易度の差が見られた。「ている」と対立する形式に「た」「ある/いる」が確認されたが,対立の様相は類型ごとに異なっていた。この差は,日中両語の事態の捉え方の違いと,インプットの不明瞭さから説明可能である。本研究は,動詞類型による「ている」の習得難易度の差異を明らかにし,母語の影響とインプットの観点から説明を加えた点で意義深いと言える。

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© 2022 公益社団法人 日本語教育学会
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