本稿では,日本語を第二言語とする子ども(小学4~6年生,n=193)を対象に実施した,格助詞「が」「を」「に」「で」の記述式産出テストの結果を報告する。合計得点においては,滞日5~6年目でほぼ全ての子どもが日本語モノリンガルの基準点を超えているが,滞日期間が短くても基準点を超える子どもは存在し,個人差が見られた。さらに,滞日年数が短い(5年未満)子どもを中心に,苦手とする格助詞の用法やその誤用について分析を行ったところ,西川・青木(2020)でも指摘されている語順交替に加え,自他や授受など対応のある動詞に関連する項の格助詞を苦手としていた。また,無情物名詞のガ格,経路を示すヲ格など,典型例から外れるアイテムは正答率が低かった。ただし,誤用ではあってもランダムではなく,子どもなりのパターンに則って助詞を用いる様子も窺えた。これらの結果を踏まえて,教育実践への応用を議論する。