日本語の研究
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証拠表示化する「と」と談話構造 : 頻度から見た文法化の層状的拡大
柴崎 礼士郎
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2005 年 1 巻 4 号 p. 47-60

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抄録
本稿では、日本語の補文標識「と」が証拠表示化する談話的基盤を文法化の観点から考察する。本稿の中心点は以下の3点である。a.文法化には段階性があり、広範なデータベースに基づく具体的頻度によりそれを裏付ける点。b.補文標識「と」が補文動詞を省略して証拠表示化するのは特定の談話構造に起因している点。c.その文法化を特徴付ける談話構造は複数存在し、それぞれの構造的特徴に動機付けられ、頻度として中心的なものから頻度として周辺的なものへと層状の広がりを見せている点。言語変化の層状性は一定の談話構造に起因するものであり、繰り返し生起する談話的基盤に裏付けられたものである。現在進行中の文法化を考察するには具体的頻度の提示が必須であり、具体的頻度の提示は文法化を動機付ける談話的基盤の尺度となる。
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© 2005 Author
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