2017 年 13 巻 2 号 p. 1-17
本稿では, 筆者が調査をおこなった大阪・兵庫(淡路)・高知における若年層から高年層のアクセントをもとに, 現代語で「推定」の意味をあらわす助動詞〈ラシイ〉のアクセントについて検討する。これまで先行研究において, 〈ラシイ〉と前接の語のアクセントにはさまざまな傾向が指摘されてきたが, 本稿の調査結果においても同様に地域差や世代差として複数の傾向を示すことが明らかとなった。その理由として, 現代語において「推定」の意をあらわす〈ラシイ〉が, 形容詞を作る接尾語〈ラシイ〉の発展したものであるという点が関係していると指摘する。また, 基本形「らしい」のアクセントにおけるHLLのような-3型とHHL・LHLのような-2型のあらわれ方には, 形容詞の終止形アクセントとある程度の関連性が存することも述べる。