本稿では、名詞「模様」が文末に位置して助動詞相当の形式として機能する用法について、その成立から定着に至るまでの歴史的展開を考察した。「模様だ」自体は明治期の新聞に出現しており、大正から昭和初期にかけて継続的に用例を見出せる。記事文体の口語化に伴って1920年代に「模様あり」という形態が衰退すると文末用法への偏りが著しくなり、これによって文末形式として「模様だ」が定着したと言える。ただし「模様」の前接要素の点から見ると未だ現代語と同様の特徴を獲得したとは言えず、助動詞化が進んだのはそれ以降と考えられる。こうした「模様だ」の成立は名詞性の捨象による通時的変化と捉えることができ、更にヨウダの構造変化との類似点および「様子だ」との関係性についても指摘した。