日本語の研究
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中古和文における移動動詞の経路,移動領域の標示
松本 昂大
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2020 年 16 巻 3 号 p. 17-34

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抄録

本稿では,中古和文における移動が行われる場所の格標示の違いに注目し,移動が行われる場所を経路と移動領域に分類した。そのうえで,経路と移動領域を承けるかどうかによって,移動が行われる場所を承ける移動動詞を分類し,それらの場所格標示の方法を明らかにした。その結果,経路の格標示は主に「を」が,移動領域の格標示は主に「に」が担っていたということが明らかになった。経路のみ承ける動詞は経路の共起率の高低によって,経路を必須補語とする動詞とそうではない動詞の2種に分けられる。また,中世には,「に」が担っていた移動領域の格標示を次第に「を」が担うようになるという展開を示した。移動領域を承ける動詞には,移動領域の格標示が「を」に変わっていく動詞と中世も「に」が担いつづける動詞があり,前者は移動の様態を表す動詞で,後者は着点を自ら決定しない統御不能な移動動詞であった。

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© 2020 日本語学会
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