2021 年 17 巻 2 号 p. 19-36
中世語・近世語の資料におけるガ・ホドニ・カラ・ケレド(モ)・シ節に,現代語には認められない,意志を表すものと解されるウ類が生起する例がある。本稿では,基本形との比較や異時代間の資料の対照に基づきつつ,これらのウ類が当代において確かに意志の意を有していたことを示し,その歴史に以下の3段階を想定した。
I 中世後期においては,従属節末で(意志・推量を含む)不確定的な非現実事態を表す場合に,ウが一般的に生起した。
II 近世には,従属節末でのウによる非現実事態の標示は衰退し始めるが,意志は基本形と併用されつつも,推量と同様引き続き従属節末で有標的に表すことができた。
III 近代に至ると,意志のウは従属節末での生起が容認されなくなり,主節末専用の形式となった。