日本語の研究
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琉球諸語における形容詞重複形の通方言的比較
──修飾と叙述に着目して──
占部 由子
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2022 年 18 巻 1 号 p. 53-69

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抄録

本稿は琉球諸語の形容詞重複形を対象とし,記述研究を用いた通方言的な比較によって,それが担いうる機能には動詞修飾,名詞修飾,叙述という階層が見いだせることを指摘する。これまでの琉球諸語研究では,各方言の活用体系を埋めることに焦点が当てられ,各方言の形容詞の体系の中でも重要な位置を占める重複形(例:八重山語石垣島白保方言におけるaga- 「赤」の重複形aga~aga「赤々」)はあまり注目されてこなかった。そこで本稿では近年の記述研究の蓄積をもとに,各方言における形容詞の重複形がどのような機能を担うかについて調査を行った。その結果,動詞修飾>名詞修飾>叙述という階層が見いだされ,この階層の成立には活用型形容詞の存在や,琉球諸語の形容詞連用形の機能が「高くする」のような補助動詞構文に特化していることと関連していることを述べる。

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