日本語の研究
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日本語の雑談の物語開始における談話標識の使用傾向
──「あー,そう,でも,なんか」のしくみ──
張 未未
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2022 年 18 巻 2 号 p. 55-72

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抄録

本稿では,日本語の雑談の物語開始における談話標識(DM)の使用傾向を調査し,次の3点を明らかにした。(1)物語の開始に際して,ゼロから5例まで幅があるが,1物語当たり平均約1例のDMが用いられる。(2)物語の開始に当たって,不確実性や言葉探しを表す「なんか」が最も多く用いられる。語り手自身が物語を開始する場合は,「そう」「でも」「で」「あの(ー)」も多く用いられる。相手の質問を受けて物語を開始する場合は,反応や思考を表す「あ」「あー」「うん」「あの(ー)」「いや」などの間投詞も多く用いられる。(3)物語開始時に複数のDMが使用される場合は,「情報の検索」を表すDMは自由に出現するが,基本的には「①先行文脈への反応」→「②物語の想起」→「③先行文脈と物語との連接関係の表示」→「④後続する物語に対する捉え方の表示」という提示順になる。DMの多用は,話者の態度の強調,言葉探しのための時間稼ぎ,発話内容の修正によるものと考えられる。

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