日本語の研究
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首都圏方言の二重対格構文
──オと無助詞による適格性の違い──
小西 いずみ大槻 知世白岩 広行
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2022 年 18 巻 3 号 p. 35-51

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抄録

現代日本語共通語には同一節内の成分として対格名詞句を複数とりにくいという「二重対格制約」があるとされる。本研究では,共通語の地理的基盤と言える首都圏の方言において対格にオとØ(無助詞)があるとの前提に立ち,15種の二重対格構文について2つの対格句の4つの格パターン[オ-オ][オ-Ø][Ø-オ][Ø-Ø]の適格性を6名の話者に判断してもらった。その結果,首都圏方言における二重対格構文は,(a)4つの格パターンのいずれでも容認度が比較的高いタイプ(「~の中オXオ探す」等),(b)[オ-オ]に比べ[オ-Ø][Ø-オ][Ø-Ø]の容認度が高いタイプ(「たかしオ頭オたたく」「車オ門オ通す」等),(c)4つの格パターンのいずれでも容認度が低いタイプ(他動詞使役文等)に分類できることが分かった。(c)は統語的な制約としての二重対格制約の存在,(b)は表層の形態上の制約としての二重オ格制約の存在を示すと言える。

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© 2022 日本語学会
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