日本語の研究
Online ISSN : 2189-5732
Print ISSN : 1349-5119
18 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
 
  • 藤原 慧悟
    2022 年 18 巻 3 号 p. 1-17
    発行日: 2022/12/01
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    本稿では,中古和文における話し手の意志をめぐる疑問文について,疑問文のタイプと文末の助動詞に注目して調査を行ない,話し手の意志をめぐる真偽疑問文には「まし」が用いられること,話し手の意志をめぐる補充疑問文には「まし」も「む」も用いられることを明らかにした。また,何を問題にするか,行為を実行することが決まっているか否かによって,話し手の意志をめぐる疑問文の各形式を整理した。「~や~まし」は「行為を実行するか否か」を,「不定語~まし」と「不定語~む」はどちらも「行為をどのように実行するか」を問題にする。また,「いかにせまし」は「~や~まし」と同様に「行為を実行するか否か」を,「いかにせむ」は「どんな行為を実行するか」を問題にする。文末に「まし」が用いられた話し手の意志をめぐる疑問文は行為を実行することが決まっていないのに対して,「む」が用いられた話し手の意志をめぐる疑問文は行為を実行することが決まっている。

  • 中村 明裕
    2022 年 18 巻 3 号 p. 18-34
    発行日: 2022/12/01
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    荷田春満のアクセント資料のうち第一種表記法で記されたものについて、先行研究(川上蓁2009)を再検討し、資料に一層の分析を加えることで、次の結論を得た。(1)春満による第一種表記法は「上声は高起式無核の型を、平声は高起式有核の型を、去声は単に低起式の型であることを示すのみである」(川上2009)とされてきた。が、第二種表記法で記された資料と照らし合わせた結果、「上声はH1型以外の高起式の型を、平声はH1型を、去声は低起式の型を示す」と改めるべきである。(2)第一種表記法で記された春満によるアクセント資料を類別語彙と比較すると、顕著な対応を示す。近世京都のアクセント資料として信頼できるものである。

  • ──オと無助詞による適格性の違い──
    小西 いずみ, 大槻 知世, 白岩 広行
    2022 年 18 巻 3 号 p. 35-51
    発行日: 2022/12/01
    公開日: 2023/06/01
    ジャーナル フリー

    現代日本語共通語には同一節内の成分として対格名詞句を複数とりにくいという「二重対格制約」があるとされる。本研究では,共通語の地理的基盤と言える首都圏の方言において対格にオとØ(無助詞)があるとの前提に立ち,15種の二重対格構文について2つの対格句の4つの格パターン[オ-オ][オ-Ø][Ø-オ][Ø-Ø]の適格性を6名の話者に判断してもらった。その結果,首都圏方言における二重対格構文は,(a)4つの格パターンのいずれでも容認度が比較的高いタイプ(「~の中オXオ探す」等),(b)[オ-オ]に比べ[オ-Ø][Ø-オ][Ø-Ø]の容認度が高いタイプ(「たかしオ頭オたたく」「車オ門オ通す」等),(c)4つの格パターンのいずれでも容認度が低いタイプ(他動詞使役文等)に分類できることが分かった。(c)は統語的な制約としての二重対格制約の存在,(b)は表層の形態上の制約としての二重オ格制約の存在を示すと言える。

《資料・情報》
〔書評〕
日本語学会2022年度春季大会シンポジウム報告
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