キリシタン版『羅葡日辞書』にみられる未知語を抽出し、同書のラテン語見出し・ポルトガル語語釈の翻訳によって語義を推定し、語彙史研究上での『羅葡日辞書』の価値を再評価した。
ラテンアルファベットで印刷された『羅葡日辞書』の日本語語釈に和語が多い理由は、複数の語種を併用する日本語語彙の豊富さに対応すること以外に、同音異義語が多く漢字表記がなければ識別が困難な漢語と併記することで語義を明らかにするという目的があったからである。そのため『羅葡日辞書』は日本語として使用が稀な複合語を多く取り入れているが、これは和語の造語力と語義の透明性を巧みに利用した翻訳の方法であった。