本稿は,助詞マデが中世後期に獲得した限定用法の特徴を明らかにし,成立過程を考察する。中世後期の当該用法は,名詞・節の両方に後接可能で,事物も事態も限定する。主に述語として用いられ,序列に基づく最下位限定を表す。
中古の段階では,マデは,連用格助詞と相互承接せず,述語に立つこともなかったが,中世に入ると,これらの例が現れ始める。述語用法は,前期は名詞や指示詞を取る例が大勢を占めたが,後期になると,節を受ける例が急増する。
「限定」は述部に立つ「限度」のマデから生じた。「限度」は,当該要素を成立範囲の限界点として取り出し,それに至る全要素を含めて示す。他方,「限定」は,当該要素のみを,それ以上はない限界点として取り出す。節を受け,述部で多用されたことで,「限度」のマデが含意する排他性が焼き付けられた結果,限定用法が生じた。