日本語の研究
Online ISSN : 2189-5732
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サラバの史的展開
──サレバ・未然形バとの対照──
川村 祐斗
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2024 年 20 巻 1 号 p. 1-17

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抄録

サラバの“別れの挨拶語”化の過程を把握するには,その前段階である接続詞化の過程を精緻化する必要がある。接続詞化は,サラバが順接仮定条件の用法を失い,「状況を区切り,場を展開する機能(場面展開機能)」を獲得する変化である。その過程を辿るため,サラバの後続表現と先行事態に着目し,順接確定条件を表すサレバ,順接仮定条件を表す未然形バと比較した。サラバはサレバ・未然形バと異なり,①意志・命令表現との共起が多く,鎌倉期以降共起率が7~9割に達すること,②先行する外部事態を受ける例が多く,室町期に8割以上に達することを確認した。①②や先行論の指摘より,サラバは室町期に場面展開機能を獲得し,接続詞化したと考える。サレバや未然形バと比較することで,従来指摘されてきたサラバの特徴が,順接仮定条件のサ系接続表現としての,サラバ独自のものであることを示した。

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