本稿では,無助詞とノ,ガが主語を表す例を対象にし,平安時代から現代までの構造面の変化に注目しながら,三形態の歴史的展開と,変化を促した原動力について考察した。論じた点は次の通りである。①無助詞は文中の主述関係の区切りが不明瞭な「終止形述語」の大きい構造を成し,ノとガは主述関係の区切りが明瞭な「連体形述語」の小さい構造を成している。②中世末頃までは構造の大きさにより,無助詞が従属節と主節,ノが連体節と準体節に偏って用いられている。③ガが無助詞を超え,勢力拡大出来たのは,連体形述語の小さい構造により,文中に主述関係のまとまりを示す区切りが出来たことが主な要因と見られる。④ヒト・モノ準体の衰退が,ノが連体節においてなお,主語表示の役割を維持している要因の一つと見られる。