笑い方の表現と笑う主体に関して, 日本語と中国語の小説およびその翻訳における笑い方の表現の使用実態を調査し, 日中両言語の母語話者を対象に意識調査を行った。その結果, 両言語とも笑い方の表現は, それ自体が肯定的あるいは否定的イメージを喚起するだけでなく, 描写される主体のイメージをもある程度喚起すること, 笑う主体が主人公の場合, 両言語ともさまざまな表現が文脈によって使い分けられること, 笑う主体が主人公でない重要人物の場合, 日本語では味方か敵対者や悪印象を伴う人物かで使用される表現に違いがある一方, 中国語ではそのような違いは見られないことがわかった。この結果は, 中国語では「どのように笑うか」という点が使い分けで重視されるのに対し, 日本語では「どのような人物が笑うか」という点がより重視される場合があること, このような使い分けの傾向がプロの作家や翻訳家だけでなく一般の母語話者にも見られることを示唆する。