近世以降の「トキテハ」「トキタラ」を含む「ト」+「来る」表現について次の点を明らかにした。①近世前期は,移動の解釈を持つ「引用第II類」を表していたが,18世紀以降,名詞的な表現を前接し移動の解釈を取らない「非移動」が,眼前の出来事について臨場感をもって取り上げる際に使用されはじめる。同時期に江戸語にて,極端な出来事をとりたてて提示する「とりたて」が使用されはじめる。両者は「肯定的評価」「否定的評価」といった傾きを持たない。②近代以降,「とりたて」は主題を対比的に取り上げる「対照主題」との関連を強めていき,特に,取り上げた出来事について他の存在よりも低く評価する文脈で多く使用されていく。これが現代共通語のトキタラの持つ「否定的評価」寄りの評価的意味と通じるものであると解釈した。