抄録
本稿は、奄美大島加計呂麻島における観光業と移住者定住化の過程における職業選択との関連性について論じ
るものである。加計呂麻島は、1990年代にスキューバダイビングブームにより移住した人々が中心となって観光
業が営まれている。現在、奄美群島の世界自然遺産登録で注目される中、2020年に実施した移住者への調査をも
とに、加計呂麻島での観光業と移住者職業選択についての分析を試みる。そのうえで、これらの関連性について
示すものである。
調査から、移住者の職業選択の背景には、奄美群島振興開発基金による財政的支援の存在が示された。また、
移住者の営む観光業や一次産業においては、相互関連性を持つ多角的経営が行われていた。さらに、観光業の特
質から、島内での観光業は、移住者の雇用の受け皿としての役割を担うと同時に、移住者は、経済的合理性に基
づく職業選択の傾向が見られることが明らかになった。