日本近代文学
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論文
書き変わる日本と東欧
――横光利一のブダペスト体験――
中井 祐希
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2019 年 100 巻 p. 31-46

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抄録

本稿では、横光利一の一九三六年のブダペスト体験と、その体験がどのように「旅愁」に影響を与えていったのかについて考察を行った。まず、ブダペスト体験を基に描いた「罌粟の中」の梶が、ツラニズムの関係者と接触し、日本とハンガリーの密接な関係性に気づいていく過程を確認した。次に、「罌粟の中」と「旅愁」を比較検討し、身体と音に関するモチーフの共通点を抽出した。最後に、東洋と西洋の対決と調和といった「旅愁」での問題を解決するため、横光はかつてのブダペスト体験を想起し、「罌粟の中」を発表したのではないかと結論付けた。このように、横光のブダペスト体験は、横光の晩年の問題意識と深く関わっていることを明らかにした。

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