日本近代文学
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《特集 文学史はどこから来て、どこへ行くのか》
歴史からの逃亡と乖離
──戦後国語教育と文学史への視点──
千田 洋幸
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2022 年 106 巻 p. 64-79

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抄録

一九五〇年代の高校国語教科書には、敗戦直後のGHQ主導による新教育の反動により、多くの文学史教材が収録されている。それらは敗戦によって断絶の危機に見舞われた日本の「伝統」「民族」を文化の面から再構築することを目指していた。しかしその多くは近代文学の後進性・特殊性と西欧文学に対する劣等感を表現するもので、国語教育者が自己の戦争責任への直接的な追及を回避するため、欺瞞的な自己批判を行ったにすぎなかった。この意味で、文学史教材は「歴史からの逃亡」の産物といえる。国語教育におけるこの非歴史的な態度は、贖罪を乞う主人公が登場する文学教材を呼び寄せ、また一方では「文豪」が活躍するコンテンツのヒットを招き寄せるという皮肉な結果をもたらしている。

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