日本近代文学
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論文
屍と詩
辺見庸「眼の海――わたしの死者たちに」――
吉田 恵理
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2018 年 98 巻 p. 226-241

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抄録

本稿は、辺見庸「眼の海――わたしの死者たちに」の詩群がもつ東日本大震災後の詩表現の批評性を解き明かそうとするものである。災厄のスペクタクルから隠蔽され、生(者)と死(者)の観念的な弁別を攪乱する〈屍体〉の哲理が、「単独者」の「犯意」をもって問題化されていることをまずは同時期の作品外の言説から確かめる。その上で取り上げた二篇の詩の叙法の分析によって明らかにしたのは、「モノ化」する〈屍体〉と「モノ化への抵抗」である言葉との抗争状態が積極的に惹き起こされ、〈屍体〉の存在の様式が「わたし」の現実認識の反証の可能性となることである。それはまた、〈屍体〉を想像することなくして「わたし」の責任を思考することが可能かという問いを生起せしめるのだと結論づけた。

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