2022 年 21 巻 3 号 p. 100-107
ハムストリングス(HAM)は解剖学的には膝関節屈曲筋に分類されるにもかかわらず、特定の股・膝関節角度では膝関節伸展作用を発揮できる可能性があると報告されている。しかし、どういった股・膝関節角度でHAMが膝関節伸展作用を発揮するのかは明らかとなっていない。本研究の目的は、股・膝関節角度の変化とそれに伴う膝関節運動におけるHAM機能の変化の関係を数値シミュレーションによって明らかにすることである。筋骨格モデル解析用ソフトウェアOpenSimを用いて股・膝関節角度の変化に伴うHAM機能の変化を検証した。解析対象はHAMを構成する半膜様筋(SM)・半腱様筋(ST)・大腿二頭筋長頭(BFLH)・大腿二頭筋短頭(BFSH)の4筋とした。膝関節運動におけるSM・ST・BFLH・BFSHの機能を同定するために、筋が発揮した張力に由来する関節角加速度を推定することができるInduced acceleration analysisを使用した。股・膝関節角度条件を規定する各関節角度の可動範囲は股関節屈曲角度-30〜90°、膝関節屈曲角度-10〜90°とした。シミュレーションの結果、1) 膝関節運動におけるSM・ST・BFLH・BFSHの機能は股・膝関節角度に応じて動的に変化すること、2) SM・ST・BFLHは特定の股・膝関節角度では膝関節伸展作用を発揮すること、3) BFSHはいかなる股・膝関節角度条件でも膝関節伸展作用を発揮しないこと、の3点が明らかとなった。これらの知見は股・膝関節角度と膝関節運動におけるHAM機能を考える上で基盤となるデータとなり得ることが考えられる。