新潟医療福祉学会誌
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シンポジウムサマリー1:第23回新潟医療福祉学会学術集会 シンポジウム
研究活動に基づく産学連携の取り組みと地域連携に向けた展望
椿 淳裕
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2024 年 23 巻 3 号 p. 59-60

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1 我々の研究活動

本学理学療法学科の運動生理Labでは、様々な計測機器を用いて運動に伴って生じる生体の反応や、安静状態を継続することによる生体の反応を計測し、理学療法に応用するための基礎的な知見を得る研究を継続している。中でも、運動に伴う大脳皮質の微小循環の変化については、非侵襲的かつ身体拘束が少なく、またある程度の時間分解能での測定が可能である近赤外線分光法(near-infrared spectroscopy;NIRS)により計測し、脳機能との関連を含めて報告1)-5)してきた。

2 測定中の体調不良とその信号変化

健康な大学生を対象に測定を行っている中で、稀に体調不良を訴える被験者がいる。数年に1名いるかいないかの頻度であるが、安静を保持する間、あるいは運動後に血圧の低下を生じそれにより体調不良を申し出る場合が多い。その際の信号を確認すると、血圧低下のタイミングあるいはそれよりも若干早くに、大脳皮質の微小循環が低下し始める現象を確認した。

3 急性期でのリハビリテーション

入院後の早期からリハビリテーションを実施することで機能予後の改善が得られることが報告6)されて以降、急性期でのリハビリテーションが積極的に行われるようになった。また本邦でも日本集中治療医学会早期リハビリテーション検討委員会7)により、エキスパートコンセンサスが示された。種々の指標で早期離床あるいは早期からの積極的な運動に対する中止基準が設けられているが、脳内の変化を客観的に、かつ他覚的に示す指標はない。体調不良例の反応から、NIRSがリスク管理に利用できる可能性を着想し、三次救急病院の理学療法士との共同研究を開始した。

4 現在進行中の産学連携

NIRSでの計測は、これまで大型かつ高額の機器が主流であったが、数年前より測定チャネル数は少ないもののウェアラブル型の機器が出始めた。このようなウェアラブル型のNIRS機器を製造・販売している企業とともに、急性期のリハビリテーションにおいて使用できる機器の開発を目指し、経済産業省関東経済産業局による支援を受けて、産学連携による事業を開始した。

5 地域連携に向けた展望

現段階では地域連携にまでは至っていないものの、当Labでは佐渡市民を対象としたフレイル予防事業8)を行っており、今後魚沼市民を対象とした同様の事業も予定されている。このような地域住民を対象とした事業でも利用することで、地域連携へと進めていきたい。

References
 
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