新潟医療福祉学会誌
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シンポジウムサマリー4:第23回新潟医療福祉学会学術集会 シンポジウム
多職種協働や地域連携の実践から見えてきたこと —介護予防や健康教室などの事業から—
渡邉 敏文
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2024 年 23 巻 3 号 p. 65

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これまで、新潟医療福祉大学社会福祉学科では、新潟市および新潟県などの地方自治体から受託した事業を数多く実施してきた。

新潟市から受託している「新潟市多職種合同介護予防ケアプラン検討会」は、2020(令和2)年度から開始し4年目を迎えている。多様なプロセスを踏みながら、介護予防ケアマネジメントの質の向上や高齢者のQOL(生活の質)が高まることを目指している。この検討会を実施することになった背景として、厚生労働省が地域に元気な高齢者を増やすために、2016(平成28)年度から先進的な自治体の効果的な介護予防の手法を全国展開している「介護予防普及展開事業」がある。多職種による事例検討事業がその手法の一つであり、先進的な取り組みが行われており、埼玉県和光市や大分県では要介護認定率が低下している。和光市では、2011(平成23)年から2015(平成27)年の間で、要介護認定率が9.6%から9.3%に下がっている。また、大分県では、第1号被保険者数に対する割合(認定率)が2019(令和元)年度末現在で18.4%となっており、全国平均を0.4ポイント下回っている。この要因については、保険者(市町村)が開催する地域ケア会議による自立支援型ケアマネジメントの推進や介護予防事業等の効果によるものであるとしている。新潟市では、助言者に理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、薬剤師、歯科衛生士、管理栄養士の6職種が出席することを基本に、年に8回程度、医師がスーパーバイザーとして出席している。新潟市の検討会の特徴としては、司会者をソーシャルワーク専門職(新潟医療福祉大学社会福祉学科教員)が担っていることがあげられる。

2012(平成24)年度から実施している「介護予防在宅支援研究事業(新潟水俣病患者の健康教室)」については、2012年度と2013年度に、理学療法士・作業療法士・保健師(看護師)・社会福祉士・介護福祉士などの専門職が協働して、調査・研究や新潟水俣病患者に対する個別プログラム(訪問)を実施した。その後は、集団プログラムの健康教室を、歯科衛生士や健康運動指導士も含め継続的に実施している。この事業には学生も参加し、将来、社会福祉士・精神保健福祉士・介護福祉士・児童厚生一級指導員などの専門職を目指す学びとしても、有効に機能している。

新潟県から受託している「新潟水俣病発生地域における介護予防在宅支援事業(阿賀野川流域健康教室委託事業)」については、2020(令和2)年度から開始しており、福祉や保健の専門職に加え、医師も参加し医学的な視点も組み込んで開催している。

このような事業の展開の中から見えてきたことは、多職種協働や地域連携の重要性である。現代社会は、多様化・複雑化し、時代の流れが速くなっている。さらに、地域における結びつきの希薄化も進んでいることから、これまでの分野ごとの相談体制では対応できないケースが多く、制度の狭間にある課題などは対応できない場合がある。これらへの対策として、さまざまな協働・連携は重要な「要」となる。地域住民の視点から言えば、地域における活躍の場を設定することで、地域住民のつながりを創っていくことや、住民が地域で生きていく意欲・生きがいを自らが育んでいく機会が必要である。住民の個人的な視点からも、一人ひとりが幸せに暮らしたいと思っていることに加え、人とつながっていることで安心することなどからも、多職種協働や地域連携がますます必要となってきている。

 
© 2024 新潟医療福祉学会

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