日本化学会誌(化学と工業化学)
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一般論文
中国および日本で使用される石炭と石油の硫黄同位体比
丸山 隆雄大泉 毅種岡 裕南 直樹福崎 紀夫向井 人史村野 健太郎日下部 実
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2000 年 2000 巻 1 号 p. 45-51

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抄録
北東アジア地域の人為活動に由来する大気中硫黄の循環を検討するため,同地域で産出あるいは使用される石炭,石油および日本国内で使用量の多い中東産石油などの硫黄同位体比を燃焼実験により測定した。
中国炭(30種),ロシア炭(5種)の硫黄同位体比(δ34S)は,単純平均値±標準偏差でそれぞれ,7.8±11.0‰, 4.5±4.8‰を示した。また,揚子江以北地域で産出あるいは使用されている中国炭のδ34S値は揚子江以南と比較して明らかに大きな値(5-6‰程度)を示し,これは両地域における石炭の形成環境の違いによると推測された。これらのδ34S値は日本国内で使用量の多い中東産石油の値に比べ,明らかに高い値であった。我が国の日本海側地域における降水やエーロゾルの非海塩性硫黄のδ34S値は冬高夏低の季節変動を示しており,これらの結果は,大陸の化石燃料燃焼により発生した硫黄酸化物が,日本海を越えて我が国の日本海側地域に酸性降下物として降下していることを示していると考えられる。
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© 2000 The Chemical Society of Japan
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