日本化学会誌(化学と工業化学)
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一般論文
プロトカテク酸修飾β-シクロデキストリン—鉄(III)錯体触媒共存下での過酸化水素によるベンゼンのヒドロキシ化における活性種のESRスペクトルによる解析
櫻庭 英剛入内島 さちこ竹堤 俊紀堀井 雅明
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2000 年 2000 巻 10 号 p. 695-703

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抄録
プロトカテク酸修飾β-シクロデキストリン-鉄(III)錯体([FeIII(β-CD-6-PA)])を触媒に用いた過酸化水素によるベンゼンのヒドロキシ化反応の酸素ラジカル活性種を電子スピン共鳴(ESR)分析によるスピントラップ法で検索した。スピントラップ剤には5,5-ジメチル-1-ピロリンN-オキシド(DMPO)を用いた。カテコール誘導体の置換基の電子的性質はpH1-6の領域でDMPOにトラップされたヒドロキシルラジカル(DMPO-OHラジカル)のシグナル強度に影響を与え,HO·ラジカル発生に二つのpH依存パターンを示した。[FeIII(β-CD-6-PA)]触媒によるヒドロキシ化反応で最も高い反応活性を示したpH2.5において,DMPO-OHのシグナル強度は最小になった。一方,ヒドロキシ化率が著しく低下したpH1ではそのシグナル強度は最大となり,この鉄錯体が形成されていない強酸性側でHO·ラジカルが最も多く発生していることがわかった。また,反応が完全に不活性であったpH5-6領域でもDMPO-OHのシグナル強度はpH2.5の値よりも約1.5-2倍高い値を示した。これらのpH1-6の領域でのDMPO-OHのシグナル強度の変化は,HO·ラジカルがこの触媒反応系でのベンゼンのヒドロキシ化の主なる酸化活性種ではないことを示すものである。このHO·ラジカルが関与しないヒドロキシ化の活性種としては,pH2.5で[FeIII(β-CD-6-PA)]と過酸化水素から形成される,Hamilton酸化系で呈示されている共鳴混成されたo-キノン-鉄-酸素ラジカル複合体が推定された。
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