日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
2000 巻, 10 号
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総合論文
  • 香月 勗
    2000 年 2000 巻 10 号 p. 669-676
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    最近著者らは,ビナフチル骨格を不斉要素として持つ第2世代(ニトロシル)(サレン)ルテニウム錯体が光照射により活性化され,ほかの(サレン)金属錯体には見られない特異な触媒活性を示すことを見いだした。このルテニウム錯体を用いることで,例えば,共役オレフィンのエポキシ化を異性化を伴うことなく高エナンチオ選択的に行うことができる。(サレン)マンガン錯体では困難なトランス-オレフィンのエポキシ化も高エナンチオ選択的に進行する。シクロプロパン化では,従来法では困難であった高シス,高エナンチオ選択性が初めて達成された。さらに,ラセミアルコールのエナンチオマー区別酸化反応が分子状酸素を酸化剤として進行する。そのほかに,キラルルイス酸としてラセミ-エポキシドの速度論的分割などを触媒する。これらの結果について報告する。
一般論文
  • 亀田 徳幸, 米田 哲也
    2000 年 2000 巻 10 号 p. 677-683
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    アリルベンゼン類であるアリルベンゼン,オイゲノール,2-アリルフェノールおよびエスドラゴールの[RhH2(Ph2N3)(PPh3)2](ジヒドリドロジウム錯体)による異性化反応および水素化反応をジメチルスルホキシド(DMSO)中において均一系,水素圧1atm,303Kで行った。その触媒活性は基質としてアリルベンゼンを用いた場合,最も大きかった。アリルベンゼンの異性化反応による生成物はtrans-およびcis-1-プロペニルベンゼンであり,水素化反応による生成物はプロピルベンゼンであった。窒素雰囲気下で異性化速度の低下が認められたことから,ジヒドリドロジウム錯体と水素との反応により,活性が向上した活性種が形成されることを示している。他の溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミド,テトラヒドロフラン,アセトン,ベンゼンおよびトルエンを用いた場合,水素化反応はほとんど進行しなかった。前報および本報の結果から,異性化反応および水素化反応の反応機構を提案した。
  • 櫻庭 英剛, 堀井 雅明, 竹堤 俊紀
    2000 年 2000 巻 10 号 p. 685-694
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    3,4-ジヒドロキシ安息香酸(プロトカテク酸,PAH)をエステル結合でβ-シクロデキストリン(β-CD)のC-6位またはC-2位に一置換修飾した配位子(β-CD-6-PAとβ-CD-2-PA)を合成した。それら配位子と鉄(III)の錯体を触媒とし,過酸化水素(H2O2)によるHamilton類似系でのベンゼンの直接ヒドロキシ化反応を試み,PA基の反応に及ぼす置換位置効果などについて検討した。鉄(III)とβ-CD-6-PAはpH2.5で1:2,pH6.0で1:3のキレート錯体を形成し,それらの錯体の安定性は1:3錯体(λmax536nm,ε=2030,logK′=13.8)»1:2錯体(λmax667nm,ε=860,logK′=8.66)であった。これらの錯体構造はベンゼンのヒドロキシ化反応に大きな影響を与え,触媒量(H2O2基準で0.005モル量)の1:2錯体(pH2.5)反応ではH2O2基準での収率は99%以上,ターンオーバー数200の最大の反応活性を示したが,1:3錯体触媒(pH6.0)は全く反応を活性化しなかった。プロトン濃度の高いpH1.0では錯体は形成されず,反応活性は著しく低下した(収率(H2O2基準)11.4%)。pH2.5でC-6およびC-2修飾体触媒を用いた反応で得られた主生成物はジヒドロキシ化合物であり,C-6修飾体ではオルト置換体のカテコール(73%)が,C-2修飾体ではパラ置換体のヒドロキノン(24%)が最大収率で得られた。β-CDに修飾されたPA基の置換位置による生成物選択性の相異は,一次生成物として生成したフェノールがヒドロキシ基を先頭にしてβ-CD修飾体の第二級ヒドロキシ基側から出入りするモデルにより説明できると考えた。
  • 櫻庭 英剛, 入内島 さちこ, 竹堤 俊紀, 堀井 雅明
    2000 年 2000 巻 10 号 p. 695-703
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    プロトカテク酸修飾β-シクロデキストリン-鉄(III)錯体([FeIII(β-CD-6-PA)])を触媒に用いた過酸化水素によるベンゼンのヒドロキシ化反応の酸素ラジカル活性種を電子スピン共鳴(ESR)分析によるスピントラップ法で検索した。スピントラップ剤には5,5-ジメチル-1-ピロリンN-オキシド(DMPO)を用いた。カテコール誘導体の置換基の電子的性質はpH1-6の領域でDMPOにトラップされたヒドロキシルラジカル(DMPO-OHラジカル)のシグナル強度に影響を与え,HO·ラジカル発生に二つのpH依存パターンを示した。[FeIII(β-CD-6-PA)]触媒によるヒドロキシ化反応で最も高い反応活性を示したpH2.5において,DMPO-OHのシグナル強度は最小になった。一方,ヒドロキシ化率が著しく低下したpH1ではそのシグナル強度は最大となり,この鉄錯体が形成されていない強酸性側でHO·ラジカルが最も多く発生していることがわかった。また,反応が完全に不活性であったpH5-6領域でもDMPO-OHのシグナル強度はpH2.5の値よりも約1.5-2倍高い値を示した。これらのpH1-6の領域でのDMPO-OHのシグナル強度の変化は,HO·ラジカルがこの触媒反応系でのベンゼンのヒドロキシ化の主なる酸化活性種ではないことを示すものである。このHO·ラジカルが関与しないヒドロキシ化の活性種としては,pH2.5で[FeIII(β-CD-6-PA)]と過酸化水素から形成される,Hamilton酸化系で呈示されている共鳴混成されたo-キノン-鉄-酸素ラジカル複合体が推定された。
  • 畑中 研一, 久能 めぐみ, 清水 健吾
    2000 年 2000 巻 10 号 p. 705-707
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    硫酸化多糖と線維芽細胞増殖因子(FGF)との相互作用に関して官能基の種類が相互作用に及ぼす影響を調べるために,デキストランのカルボキシメチル化と硫酸化を行い,種々の置換度の硫酸化カルボキシメチルデキストランナトリウム塩(硫酸化CM-デキストランナトリウム塩)を調製した。カルボキシメチル基が存在すると,低硫酸化度の多糖でもFGFを活性化することがわかった。また,酸性多糖のFGF活性化においては,糖の種類や結合様式よりもむしろ硫酸基を含むアニオン化度が重要であることがわかった。
  • 長部 友加里, 亀山 敦, 中村 茂夫, 西久保 忠臣
    2000 年 2000 巻 10 号 p. 709-716
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    主鎖に二置換アミド型ノルボルナジエン(NBD)構造を有するポリ(エステル/アミド)(P-1)の耐候性とその向上について検討を行った。P-1のフィルム状態での屋外暴露試験を行った結果,暴露期間の経過とともに蓄熱量が減少し,架橋反応や主鎖の切断が起ることが判明した。一方,P-1フィルム表面をポリビニルアルコール(PVA)フィルムで保護した試料について同様に屋外暴露試験を行った結果,PVAで保護することにより蓄熱量の減少が抑制され,P-1フィルムの耐候性を向上させることが可能であることが明らかとなった。また,P-1に光安定剤を添加し,同様に耐候性の検討を行った結果,暴露90日までは,蓄熱量の減少は見られず,P-1フィルムの光-熱変換機能が安定に作用することがわかった。さらに,P-1をガラス板で保護した場合にも耐候性の向上が認められた。以上のことから,NBDポリマーの表面を保護すること,および光安定剤を添加することにより,NBDポリマーの耐候性が効果的に向上することが判明した。
  • 肥田 敬治, 富岡 秀雄
    2000 年 2000 巻 10 号 p. 717-723
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    紫外線硬化塗料の耐候性を向上させるために,紫外線硬化時に硬化阻害を起こさず,同時に紫外線吸収剤としても作用しうる紫外線吸収剤の開発を試みた。紫外線吸収剤の機構に着目し,ヒドロキシ基を保護した新しい紫外線吸収剤を設計した。すなわち,2-(H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノールのヒドロキシ基をジフェニルホスフィニル基で保護した新規な紫外線吸収剤を合成し,紫外線硬化性,耐候性などを検討した。その結果,この紫外線吸収剤は,紫外線硬化時には,硬化阻害を引き起こさないことがわかった。
    さらに,この紫外線硬化塗料は,耐候性試験において良好な耐候性を示した。また,この紫外線吸収剤は,紫外線照射下,強い蛍光を発することを明らかにした。硬化阻害が低減されたのは,この蛍光をさらに光重合開始剤が吸収するか,または,励起エネルギーの移動によって,開始剤が励起され,重合が進行することによるものと推測した。
技術論文
  • 加藤 和裕, 吉岡 敏明, 奥脇 昭嗣
    2000 年 2000 巻 10 号 p. 725-731
    発行日: 2000年
    公開日: 2001/08/31
    ジャーナル フリー
    酸化セリウム系ガラス研磨材の水酸化ナトリウム水溶液を用いるリサイクル工程について研究した。廃研磨材と水酸化ナトリウムの重量比を1として60°C,4molkg-1の水酸化ナトリウム水溶液で処理すると,廃研磨材中の不純物(SiO2,Al2O3)のみを溶出,分離できた。再生研磨材を分離後,SiO2,Al2O3が溶解した水酸化ナトリウム水溶液を100°Cに加熱すると,ハイドロソーダライトNa8(AlSiO4)6(OH)24H2Oを析出させることができた。したがって,廃研磨材を再生し,溶解したSiO2, Al2O3からハイドロソーダライトを製造し,過剰の水酸化ナトリウム溶液を循環使用する工程が構築できた。またケイ酸ナトリウムを加えて溶液中のSiO2/Al2O3組成の調整により,浸出および沈殿工程は安定して制御できる。
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