抄録
各種濃度のBaTiO3前駆物質溶液を用いてメソ多孔体ケイ酸塩の細孔内に担持作製したBaTiO3メソ結晶とケイ酸塩のアモルファスSiO2壁との相互作用をX線光電子分光法により解明した。Ti 2p3/2電子束縛エネルギーの化学シフトは0.004,0.04,0.1mol/Lの前駆物質溶液から作製したBaTiO3メソ結晶において,それぞれ1.8,1.4,0.6eVであった。一方,Ba 3d5/2電子束縛エネルギーの化学シフトはどの前駆物質溶液からのメソ結晶においても2.9eVであった。BaTiO3メソ結晶ではTiとBaの空孔状態における原子外緩和エネルギーが異なる。Ti2p3/2電子束縛エネルギーはTi-O結合を通じた隣接メソ結晶間の電荷移動とSiO2壁の正負イオンの誘電変位のどちらともによって影響されるが,Ba 3d5/2電子束縛エネルギーはSiO2壁の正負イオンの誘電変位のみに影響される。これは,BaTiO3メソ結晶により満たされたメソ孔間でTi-O結合を通じたメソ結晶間の電荷移動が生じること,この相互作用はより希薄な系で大きく減少し,光吸収端のより大きなブルーシフトを引き起こしていることを示唆する。