2000 年 2000 巻 4 号 p. 257-265
さまざまな高分子を用いてLangmuir-Blodgett(LB)法ならびにキャスト法により細胞培養用高分子基板を調製した。これらの基板上にラット副腎髄質由来褐色細胞(PC12)を血清含有培地を用いて培養し,細胞の増殖と形態から,細胞の足場となる高分子基板表面の物理的特性と細胞接着状態との相関性について検討した。LB基板とキャスト基板上に培養したPC12細胞を比較すると,LB基板上の方がキャスト基板上よりも,細胞接着数は多く,さらに,高い細胞へん平率が観察された。高分子基板に対する水の接触角ならびに基板の表面粗さ(RMSR)を測定した。55°付近の接触角を持つ高分子基板において,またRMSR値が小さい値ほどPC12細胞の細胞密度は高かったことより,高分子基板表面の物理的特性と細胞の接着状態との間には相関関係があると考察した。高分子基板を培地中に浸漬させ,この基板上に吸着された血清タンパク質の吸着量と高次構造を,円偏光二色性スペクトルより測定した。高分子基板に吸着した血清タンパク質中のα-ヘリックス含量が多い程,細胞密度ならびに細胞のへん平率は高くなることが観察された。
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