日本化学会誌(化学と工業化学)
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一般論文
東広島における降水中有機酸の濃度,沈着量および発生源
三宅 隆之竹田 一彦藤原 祺多夫佐久川 弘
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2000 年 2000 巻 5 号 p. 357-366

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抄録

広島県東広島市において,1995年9月から1999年3月まで降水試料を採取し,有機酸濃度の測定を行った。降水中濃度は,体積加重平均でギ酸3.4μM,酢酸2.3μM,シュウ酸0.24μMだった。1996年から1998年の体積加重平均年間湿性沈着量はギ酸4.8mmol m-2,酢酸3.3mmol m-2,シュウ酸0.32mmol m-2だった。有機酸の濃度,沈着量は主に日射量に対応した光化学反応の変化に伴い,春季,夏季に高く,秋季,冬季に低いという季節変化が見られた。有機酸の全酸性物質(非海塩性硫酸イオン+硝酸イオン+非海塩性塩化物イオン+有機酸)に占める割合は,体積加重平均で7.9%(0.79-21.3%の範囲)であり,濃度,沈着量と同様の季節変化が見られた。統計解析の結果,有機酸は主に人為起源と考えられる硝酸イオン,硫酸イオン等とよい相関を示した。以上のことから,東広島において有機酸は,主に人為活動からの直接放出か前駆物質の光化学反応を起源としていることが示唆された。さらにギ酸と酢酸の気相/液相平衡濃度の計算の結果,過去の当地での大気中有機酸の実測値と比較的よく一致した。

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© 2000 The Chemical Society of Japan
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