抄録
水溶液中においてZn(NO3)2,Mn(NO3)2とNa2Sを混合してpH3.0,6.8の各条件でZnS:Mn2+の微粒子を作製し,吸収スペクトル,発光スペクトルを測定した。Zn2+に置換したMn2+によるオレンジ発光帯が強く観測されたが,ZnS表面に付着したMn2+による紫外発光帯,空孔欠陥による青色発光帯も弱いながら見られた。pHの条件により発光は経時的に変化したが,これらの変化は溶液中での粒子の安定性と関係しているものと考えられる。これらの知見に基づき,ゾル-ゲル法によりテトラメトキシシランと上記原料からゾル-ゲルガラス中のZnS:Mn2+微粒子を作製した。得られたゲル中での粒子の直径は3.1-3.8nmであった。pH6.5で作製したゲルではオレンジ発光帯が比較的強く出現するものの,若干白濁した。pH4.0で作製すると透明なゲルが得られたが,pH6.5と比較すると,オレンジ発光帯強度は約10%程度であった。これらの結果から,本方法によりゾル-ゲルガラス中でZnS:Mn2+ナノ粒子を作製できることが確認されたが,より発光強度の大きい条件の探索が必要であると考えられる。