抄録
本研究では,外因性内分泌攪乱化学物質と疑われている9種類のフタル酸エステル類に着目し,ディスク型固相抽出法を用いて,その分析法の検討を行った.その際,排水基準に定められている揮発性有機化合物11種類に含まれていないアセトンを抽出溶媒として用いることに着目し,その有効性について調べた.その結果,アセトンで抽出しヘキサンに転溶する方法(アセトン/ヘキサン転溶法)は,排水基準項目に定められているジクロロメタンを使用しないで済むことから,実験室環境のジクロロメタンの混入を気にせずに前処理を行うことができる上に,回収率および変動係数の面でも優れていることから,かなり有効な抽出方法の一つであることがわかった.
実試料の定量結果は,河川水,降雨,環境大気すべてにおいて,フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)がほかのフタル酸エステルに比べて1–2 μg/L以上と比較的高い濃度で検出された.また,全体的にはフタル酸エステル類9種類は河川水に存在する割合が高く,次いで環境大気,降雨となった.濃度的には約0.05–3 ppb程度で環境中に存在していることが確認できた.