抄録
β-シクロデキストリン(β-CDx)あるいはγ-シクロデキストリン(γ-CDx)存在下で測定された標題化合物のUV吸収スペクトル,蛍光スペクトル,円二色性スペクトルおよび蛍光寿命のデータに基づいて,分子内蛍光消光反応に及ぼすシクロデキストリン包接効果が解析された.β-CDx空洞は2-ナフチルアラニンモデル化合物のナフタレン環をアキシアルに取り込み,蛍光消光速度を顕著に低下させることが判明した.この結果は,発光消光に対する“through space”機構を支持する強い証拠を提供する.しかしながら,β-CDxと比較してより大きな空洞を有するγ-CDxはこのモデル化合物の蛍光消光反応にわずかな影響しか及ぼさなかった.一方,1-ナフチルアラニンモデル化合物はβ-CDxと包接錯体を形成せず,また,γ-CDx空洞は1-ナフチル基をアキシアルとエクアトリアルの両方の様式で包接し,結果として蛍光消光の速度を大きく減少させることはできなかった.