工業化学雑誌
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アルカリ繊維素の老成による重合度分布の変化
竹原 茂夫
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1959 年 62 巻 7 号 p. 1037-1039

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抄録

国産およびリンターパルプのアルカリ繊維素は工業的な45℃,1.5時間の老成において1000以上の高重合度部分を減少し,それ以下の部分を増加する。特に200以下の低重合度部分は急増するが,未だかなり1000以上の部分が残留する。重合度分布の不均一度は国産パルプで老成10時間ぐらいまでは低下するが,リンターパルプでは逆に上昇する。したがって比較的高温の老成によるやや不均一な解重合でも,分子の均一性の点より国産パルプに対しては効果的であり,リンターパルプには悪い。
国産パルプでも老成を重合度的にほとんど平衡状態まで進めると不均一度は一時上昇し,後再び低下する。これは老成による解重合が無定形領域における初期老成と無定形領域から結晶領域に移る中期老成と全く結晶領域のみの後期老成の3段階よりなることを示す。硝化法による重合度分布の不均一度の変化,岡村および岩崎らによる老成の解重合速度式,酸加水分解法によるいわゆる結晶領域(真の結晶領域すなわちミセルと異なる)の重合度分布の比較から,国産パルプのミセルの長さが重合度として110~120,すなわち約600Åであると推定される。
Staudingerのエステル基数は老成の極く初期は僅か増大するが,平均重合度250前後で低下し,結晶領域の解重合を主とする後期老成では負となる。したがって,かかるエステル基数は大体分子の不均一度に依存し,特に低重合度部分の多い場合には本来の化学的な意味がない。

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