有機反応(重合も含める)において,金属イオンとか有機金属化合物は反応速度,配向性,生成物の立体特性などに影響をおよぼし, その結果特定の反応を起り易くさせる点から最近とくに注目されてきた。ところで, フェノール類へのカップリングは本来フェノール類の水酸基のp-位に起り易い反応であるが,金属イオンの存在により,
o-位へのカップリングが起り易くなれば,カップリングにおける配向性の変化の点から興味がある。しかも,生成物の
o-オキシアゾ化合物は金属錯塩染料の中間体として最近重要となってきているので,
o-カップリング反応は工業的にも重要な反応と考えられる。このような目的から,(1)石炭酸へのべンゼンジアゾニウムクロリドのカップリングにおけるCu(II)の影響,(2)
p-クロルフェノールへのベンゼンジアゾニウムクロリドのカップリングにおける各種金属イオンの影響,(3)石炭酸への
o- オキシベンゼンジアゾニウムクロリドのカップリングにおけるCu(II)の影響について研究した。その結果,(1)の場合を除いて
o-カップリング速度が大となり,とくに(3)の場合には
o-カップリング体の収量がCu(II)の存在しない場合の25倍も大となった。
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