工業化学雑誌
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パルプのいわゆる結晶領域の重合度分布
竹原 茂夫
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1959 年 62 巻 7 号 p. 1040-1042

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抄録

パルプを平衡重合度まで酸加水分解した残留物を1 % アルカリで分別溶解した, いわゆる結晶領域の重合度分布は重合度約300以下のかなり広い範囲に分布している。特にミセルが崩壊したと考えられる極端な低重合度部分が非常に多くなる。その不均一度は人絹パルプにおいては大差なく,リンターパルプでは逆に大となる。したがって,原パルプより長さの均一な分子束になるとはいえない。
かかる結晶領域を濃度の異なるアルカリで分別溶解してもおもに低重合度部分が選択的に溶出して高重合度部分が累積する。したがって,本法でパルプのラテラルオーダー分布が測定されるとは考えられない。
ペーパークロマトグラフ法によるマンノース, キシロース残基の測定と硝化法による重合度分布の測定結果よりSchulzらのいう弱結合点の存在に確実性がある。
エステル基数は約40以下のきわめて低重合度の部分が増大するにしたがって, 徐々に負の値が大きくなり, この部分が除去されると再び正の値に近づくので,いわゆる結晶領域のエステル基数は不均一度に依存性はあるが,本来の化学的意味はない。

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