工業化学雑誌
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ベンゼン中の微量のチオフェンのインドフェニン呈色反応を利用する定量方法
安井 永三鈴木 汎
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1960 年 63 巻 4 号 p. 612-615

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抄録

ベンゼン中に含まれる微量のチオフェンをイサチンの発色で定量する方法については,既に幾つかの報告があるが,発色の条件を詳しく検討した報告はなかった。著者らの研究によると,イサチンの硫酸溶液は,作製後8日以上放置しなければ一定の発色を与える溶液とはならず,硫酸濃度は92%以上が必要で,硫酸は銘柄によって発色に差が生ずること,酸化剤は,イサチンでの発色を迅速完全にするためには是非必要であって,鉄ミョウバンを使用したときに良好な結果を示すことがわかった。またチオフェンを含有するベンゼンをイサチン硫酸溶液と長く接触させておくと,発色は減少するからべンゼンを添加した直後に発色剤とふりまぜること,ふりまぜる時間は5分以上が必要であり,発色後呈色が安定するまでには2時間が必要であることがわかった。共存物質の影響としては硝酸根および亜硝酸根が最も呈色に妨害を与え,塩素根,炭酸根の影響は割合に少ない。また酸化剤として過塩素酸塩の効果はない。以上のような諸条件を参考にして日常分析に使用出来るベンゼン中の微量のチオフェンの定量指針を定めたが,この方法によれば,0.01%から0.00005%に到る広い範囲において,再現性±10%以内の精度をもち,他の方法にくらべてすぐれた方法であることがわかった。

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