工業化学雑誌
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各種媒質中でのポリエチレンに対する放射線照射による赤外吸収スペクトルの変化
岡田 陽一伊藤 孝雄雨宮 綾夫
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1961 年 64 巻 2 号 p. 355-358

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抄録

各種媒質中でポリエチレンに対し放射線照射を行ない,その際に生ずる化学変化について赤外分析的な研究を行なった。媒質としては気体,液体にまたがり多数の例について試み,照射は60Coのγ線と電子線とのいずれかにより常温で実施した。ポリエチレンのフィルムは0.1mmか,または0.3mmで,電子線の場合のみ高圧法,中圧法,低圧法のフィルムを比較した。
今回の研究で化学変化を認めたのは空気,酸素,塩素,亜硫酸ガス,二酸化窒素,濃塩酸,濃硫酸,濃硝酸,クロロホルムの各種媒質中照射の場合で,この場合についてはそれぞれの化学変化について出来る限りの解釈を試みた。一方,窒素,一酸化炭素,一酸化二窒素,水,希塩酸,希硫酸,カセイソーダ水溶液,四塩化炭素の場合は変化を認めなかった。なおトランスビニレン二重結合とか照射後空気中の酸素によって酸化される現象は,どの媒質についても共通であるが今回の問題の対象としない。
照射線量は5×106r,5×107r,1×108rの3種を選んだが,さきの化学変化が線量と共に増大することを認めた。ポリエチレンとしてはその結晶化度が反応性に影響し,また電子線とγ線とで反応性に差のあることを認めた。これらの問題では,媒質分子のフィルム内部への拡散が重要な因子であると考えられる。

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