工業化学雑誌
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γ線被照射天然ゴム中の遊離基生成と消滅
祖父江 寛田畑 米穂下沢 亮介
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1961 年 64 巻 2 号 p. 375-377

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抄録

γ 線被照射ゴム中のラジカルの生成および消滅を延伸セットのある試料と, ない試料のそれぞれについて, 電子スピン共鳴吸収の測定から定量した。
電子スピン共鳴吸収スペクトルは単純な形を示し,微細構造は認められなかった。ラジカルは照射線量とともに蓄積され,7.5×107r以上の線量で飽和に達した。飽和値は延伸試料について2.40×1017spin/g,未延試料について0.68×1017spin/gであった。遊離基の生成は,線量率に比例する生成速度とラジカル濃度の2乗に比例する消滅速度を仮定した理論式によってよく表わされる。
室温では照射後のラジカル消滅は未延伸ゴムについて延伸ゴムより著しく早い。
延伸ゴム中のラジカル消滅速度への温度の影響が調べられ,温度を40℃から60℃に上げることにより消滅速度が著しく増加する結果が得られた。
照射後,延伸ゴムのベンゼン中の膨潤度は,未延伸のそれよりやや小さく,結晶化の架橋への負の寄与より,配向による正の寄与が大きくあらわれた。
天然ゴム製品の放射線加硫に必要とされる5×107rの照射では,生成ラジカル数と架橋の数との比は,延伸ゴムについて1:300であり,未延伸ゴムでは1:1000であった。

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